私は、事業提携を専門としており、事業提携については、様々な観点からパターン分けをしています。企業規模別、業歴別、機能別、新規事業の構築段階別などです。
それらについては、これまでのコラムでも書かせていただいています。
『売上アップのための事業提携のススメ〜小さな会社の必須科目〜』〈全7回〉
http://www.tcconsulting.co.jp/archives/5298
今回は、それらに加えて、事業提携(アライアンス)を経営資源の交換と捉える考え方について、書きたいと思います。
企業は、経営資源の集合体である!
現在、主流となっている経営理論であるコリス=モンゴメリー(2004)『資源ベースの経営戦略論』 (東洋経済新報社)では、おおまかに言うと、企業は、経営資源の集合体と考えます。
経営資源とは、1.技術資源、2.生産資源、3.販売資源、4.人材資源、5.資金資源の5つとなり、これらのかたまりが企業であると考えるわけです。
やや堅い言い方になりますが、確かに、そうですね。
企業は、製品や事業のもととなる技術を有していて、製品・サービスを作り出す生産設備や創造する機能があり、販売するための営業網や営業マンを持っており、そして、人材がいて、資金があるわけです。
それぞれの企業は、多い少ないの違いはあるにせよ、また、業種によって、捉え方や説明付けは異なってくるでしょうが、上記のような5つの資源が組み合わされて成り立っています。
ここでは、アライアンスと事業提携を便宜上、ほぼ同義語として使いますが、アライアンスを捉える際には、企業を構成しているそれらの経営資源を交換しているとの考え方があります。
独立した企業同士が提携するということは、5つの経営資源のうち、自社が持っている経営資源のどれかと、他社が持っている何かの経営資源を交換している行為と捉えることができます。
経営資源の交換の4つのパターン「アライアンス・マトリックス」
次のスライドは、安田洋史(2010)『アライアンス戦略論』(NTT出版)を参考にさせていただいて、私が独自に作成したものです。
冨田賢バージョンの「アライアンス・マトリックス」においては、アライアンスを4つのタイプに分けます。
つまり、同じ経営資源を交換するのか、それとも、異なる経営資源を交換するのか、それを縦軸として、横軸としては、同じ業界の中でのアライアンスなのか、それとも、異なる業界でのアライアンスなのかを設定します。
そうすると、
タイプAとしては、同じ業界で、同じ経営資源を交換するタイプ、
タイプBとしては、同じ業界で、異なる経営資源を交換するタイプ、
タイプCとしては、異なる業界で、同じ経営資源を交換するタイプ、
タイプDとしては、異なる業界で、異なる経営資源を交換するタイプ
の4つのパターンが出てきます。
タイプAとしては、たとえば、新日鉄住金さんのように鉄鋼業界同士で、同じ経営資源(この場合、技術資源、生産資源、販売資源、人材資源、資金資源のすべてになるのではないでしょうか…)を交換しているものが該当します。三井住友銀行さんや半導体業界のルネサステクノジーさん(日立、三菱電機、NECの半導体部門が経営統合)なども、このタイプとなります。
日本においては、過当競争を避け、スケール・メリットを働かせるタイプAのアライアンスが非常に多い状況で、一つの日本の特徴となっています。
タイプBとしては、同じ家電メーカーである(どういう言い方をするかは難しいですが…)のソニーのゲーム機の中に、東芝のCellプロセッサーが入っているというように、同じ業界の中で、ソニーのゲーム機の技術資源や販売資源などと、東芝の安価で良質なCellプロセッサーの技術資源を組み合わせているアライアンスが事例となります。
最近私が購入したNECの軽量のノートパソコンの液晶パネルにはシャープのIGZOが入っていましたが、これも、同じ業界で、ノートパソコンの技術と液晶パネルの技術資源の中で異なるものを交換し合っており、タイプBと言えるでしょう。
タイプCとしては、新宿にできた「ビッククロ」が事例となります。異なる業界となるアパレルのユニクロと家電量販店のビックカメラが、店舗販売という販売資源を同じように交換しています。ガソリンスタンドの中にコンビニがあるといったパターンも、異なる業界にて、同じ販売資源を交換し合っており、このタイプと言えます。
タイプDとしては、家電メーカーであるソニーと医療機器を手掛けるオリンパスという異なる業界の企業が(デジカメでは同じ業界なのでしょうが…)、ソニーの画像処理技術という資源とオリンパスの内視鏡技術という同じ技術資源ながら、異なる技術を交換し合って新しい製品を作っているパターンが事例となります。これは、ソニーが資本参加をしているため、ソニーの資金資源とオリンパスの技術資源の交換ともいえます。異なる業界での異なる経営資源の交換のパターンは、組み合わせが難しいですが、最もアライアンスの効果を出せるタイプです。
どのタイプのアライアンスをするのかを明確にする!
アライアンスを検討する際は、上記のような4つのタイプに分類される「アライアンス・マトリックス」を頭において、どのタイプのアライアンスをしようとするのか、検討しているのかをクリアーにすることが大切です。
機能別の事業提携のパターンのコラム
http://www.innovations-i.com/column/tcc/3.html
でも書かせていただきましたが、漠然とどこかと組もうと考えるでは、検討が合理的に進みませんので、「アライアンス・マトリックス」を用いて、今検討しているアライアンスは、どのタイプのアライアンスとなるのか、もっと言えば、どのタイプのアライアンスを狙っていくのかを明確にすることが大切です。
同じ業界同士なのか、異なる業界の会社なのか、そして、同じ経営資源を交換し合うのか、異なる経営資源を交換し合うのか、それを考えることで、アライアンスの検討は、より具体的で、整理した形で進めることができます。
今回は、やや堅苦しいい説明となりましたが、一つの参考として、頭に置いておいていただけたら、便利かと思います。
なお、私のアライアンスについてのインタビュー記事が『サービス革新』~サービス×イノベーション×グローバルを支援するビジネス情報誌~(2014年1月・2月号)に5ページにわたって掲載されました!
特集「新規事業、海外展開を成功させるための中小ベンチャー企業のアライアンス戦略」は、下記からPDFでご覧いただけます。
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http://www.tcconsulting.co.jp/wp-content/uploads/Service_Kakushin_Alliance_Tomita_20140102.pdf
かなり詳しく海外進出(特に、飲食業を中心としたサービス業)について、図表や事例も交えて、お話させていただいております。
是非、ご参考にしていただけたらと存じます。
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では、次回も、このコラムをよろしくお願いします♪
2014年1月30日に連載