『第14回 新規事業の戦略立案では、既定路線だけでなく、複数の戦略シナリオを作る! 』

今日は、新規事業の方向性をどのように定めるかにおいて、有益な手法について、書きたいと思います。

新規事業でどこに一歩を踏み出すかは非常に難しい問題!

新規事業立ち上げにおいて、どこに一歩を踏み出すかは、とても難しい問題です。

私自身は、普段のコンサルティング事業の中において、「新規事業の方向性の戦略コンサルティング」として、この難問に取り組んでいます。

その内容はこちら!⇒ http://www.tcconsulting.co.jp/consulting/senryaku3

自社のこれまでの事業ドメインに近い領域に出るか、それとも離れた領域に出るか、自社の強み(コア・コンピタンス)をどのように生かすかなど、検討しなければならないことは多くあります。 

そのような中で、経営者や戦略立案者は、どうしても、過去の延長線上の既定路線の戦略シナリオを立ててしまいがちです。

特に、業歴が長く、事業内容が確立している企業や、組織だって運営されている中堅から大手の企業であれば、なおさらです。

役員会や経営会議なども通さなければならないでしょうし、また、社内及び社外からの賛同を得るためにも、既定路線の戦略や方針をどうしても策定してしまいがちとなります。

前々回のこのコラム「第12回 本当に有望なビジネス・チャンスは、認知的に遠いところにある!」でも、人は、過去の経験や知識に縛られて、認知的(心理的・感覚的)に近いところの収益機会ばかり探索してしまいがちで、近視眼的になる傾向があることについて、書かせていただきました。

その内容はこちら!⇒ http://www.tcconsulting.co.jp/archives/4985


一つの戦略シナリオだけでなく、複数の戦略シナリオを立てることが重要! 

既定路線の戦略シナリオだけでは、それが本当に正しいかどうか、わかりません。

そして、高度経済成長期など、経済のパイ自体が拡大している時には、過去の延長線上の既定路線の戦略や経営計画で、業績を伸ばすことができましたが、今の時代、そういったことは望みにくい時代です。

そんな中、米国のP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)が、新製品開発に用いた手法があります。私は、これを「シナリオ・ベース戦略手法」と名付けています。

『ハーバード・ビジネス・レビュー』日本語版20131月号に、P&Gの会長のラフリー社長、その他の執筆で「独創的な戦略を科学的に策定する」として掲載されたものです。

(英語版は、

HARVARD BUSINESS REVIEW(20129) 

Bringing Science to the Art of Strategyby A.G. LafleyRoger L. Martin
Jan W. RivkinNicolaj Siggelkow
 として掲載)

また、この内容は、AG・ラフリー著『P&G式勝つために戦う戦略』(朝日新聞社、2013年)という本としても出版されています。

どういう内容かと言いますと、既定路線の戦略シナリオだけでなく、必ず、1つ以上の代替案となる戦略シナリオを複数立ててみて、その上で、それらの代替案となる戦略シナリオとの比較の中で、既定路線の戦略シナリオがよいのか、別の戦略シナリオがよいのかを判断することが大切であることが述べられています。



夢想的な「バラ色のストーリー」がシナリオである!

ここで言う「シナリオ」とは、実際に実現可能かどうかは証明しなくてもよいので、こういうことがやれそうだ、考えられそうだ、という「バラ色のストーリー」でよいと書かれています。つまり、人から、夢みたいな話だと言われるくらいの夢想的なものでもよいということです。

夢想的なものでも、既定路線のシナリオだけでなく、複数の代替案となるシナリオを作ってみるということが大切です。複数のシナリオを想定しなくてはいけない、ということを、P&G会長のラフリー氏は、繰り返し述べています。

そして、その上で、そのシナリオの実施にあたっての「難条件」を見極めて、戦略に引き上げ、戦略シナリオを導き出していくわけです。

「戦略シナリオ」とは、自社の成功プロセスを描いたバラ色のストーリーであり、市場のどのセグメントで勝負し、どう勝利を手にするかをストーリーで描くと言えます。

P&Gがスキンケア・ブランド「オレイ」で実践した方法

次に、P&Gが実際にどのように、「シナリオ・ベース戦略手法」を実践したかを見てみましょう。

P&Gは、従来の低価格ブランド製品が陳腐化し、顧客層も高齢化して、規模も小さい、目標としては、ビューティケア商品で世界一になりたい、でも、ブランドを持っていないという状況にありました。

そこで、

(1)世界的なスキンケア・ブランドを買収する、
(2)
従来のブランドをR&Dにより熟年の既存顧客層への訴求力を強める、
(3)
低価格ブランドを高級ブランドに衣替えし、高級方向の販売チャネルに変える、
(4)
高級寄りのブランドにし、対象年齢層を広げる、
(5)
他の分野のブランドをスキンケア分野にも拡大する、
という5つの新しい戦略シナリオを作り、それらを比較検討していくことによって、新しい戦略を選定しました。

すなわち、現状の会社の問題点や課題から、アイデアを出すのではなく、自社がどうなりたいのかという成功ストーリーの仮説をいくつか作る(最低1つは作る)ことにより、目標から逆算していくやり方で、戦略立案をしていきました。 

ここに、新規事業の方向性の戦略立案の大きなヒントがあります。



「どうすべきか」ではなく「何ができるだろうか」を考える!

どうしても、経営者や戦略立案者は、「どうすべきか」を考えてしまいがちですが、戦略シナリオを複数、出来るだけ多く作るにあたっては、「何ができるだろうか」を、「バラ色のストーリー」でもよいので、考えてみることが必要です。

それから、この文献では、その他にも、おもしろいことがいろいろ書かれています。

たとえば、

“評論家的な発想のマネージャーは、新しいアイデアのすべてについて、うまくいきそうもない理由を延々と並べずにはいられない。そこでリーダーは、「批判的に検証する時間は後で十分に取るから、いまは良し悪しの判断を控えるように」と折に触れて皆に念を押す必要がある。”

といったこと、皆さんも、新規事業の会議をしていて、思い当たるところはないでしょうか?

『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載されている文献は、もともとの学術論文の形よりは読みやすくなっていますし、実際の新規事業立ち上げにおいて、活用できる内容が、けっこう、載っています。私は、愛読しています。

そういった『ハーバード・ビジネス・レビュー』の文献のサーベイの内容など、新規事業でどこに一歩を踏み出すかについて、最近、2回ほど、セミナーにて、「新規事業の探索にあたっての9つのポイント」としてまとめて、お話させていただきました。戦略論の話は、どうしても、抽象的になってしまうので、なかなか難しいトライでしたが、多くの方にご参加いただき、ご満足いただけたようで、よかったです。

 【開催報告】(写真や参加者の声を掲載!)
  2014/2/13 「勝てるところで勝ちに行く新規事業戦略」
        http://www.tcconsulting.co.jp/archives/4916
  2014/3/06 「新規事業立ち上げの戦略立案法」
        http://www.tcconsulting.co.jp/archives/4993


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では、次回も、このコラムをよろしくお願いします♪

2014年3月14日に連載

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